未経験からクラウドを学ぼうとして、最初にぶつかるのは「何から手を付けるか」です。書店には資格の本が並び、動画は 200 のサービスを順に解説し、Qiita には手順が無限にあります。全部やろうとすると1週目で止まります。この記事は、このサイトの段0〜1の記事を「実際に手を動かす1か月」に組み直したものです。読む順番は各記事の「先に読んでおくもの」に従い、ここでは週ごとに何をして、何をしないかだけを決めます。
この記事の結論
- 最初の1か月は、言葉 → 切り分け → 1台 → 壊して直すの4週で組みます。1週間に1つの到達点だけを置きます。
- 手元に要る道具は3つ。ターミナル、テキストエディタ、AWS のアカウント(3週目まで作らない)。
- 最初の1か月でやらないことを先に決めます。資格の詰め込み、全サービスの網羅、コンソール手順の暗記、Kubernetes。
- 到達の目安は「EC2 を1台立てて Web サーバーを動かし、止めて消せる」。ここまでで段1「入口」の半分です。
- 詰まったら、どの段階で詰まったか(言葉か・切り分けか・設定か)を書き留めておく。それが2か月目の計画になります。
最初に決めるのは「やらないこと」
WHAT NOT TO DO範囲を先に閉じる
最初の1か月は、やらないことを決めてから始める
やらないこと
後ろの段に送る。消えるわけではない
- 資格の詰め込み(2か月目以降に通過点として)
- 200 サービスの網羅(触るのは4つ)
- コンソール手順の暗記(画面は変わる)
- コンテナと Kubernetes(段3の話)
やること
1週間に1つの到達点
- 言葉を自分の言葉で説明する1週目
- ping・dig・curl で切り分ける2週目
- EC2 を1台立てて、止めて、消す3週目
- わざと壊して、順番で直す4週目
未経験が1か月で挫折する原因は、能力ではなく範囲の広さです。先に範囲を閉じます。
最初の1か月でやらないこと
- 資格の詰め込み。 土台の言葉が無いと暗記になる。Cloud Practitioner は2か月目以降に「通過点」として置く(Cloud Practitioner の位置づけ)
- 全サービスの網羅。 200 以上ある。最初の1か月で触るのは EC2・VPC・IAM・S3 の4つと、請求の画面だけ
- コンソールの操作手順の暗記。 画面は変わる。「何をするか」と「なぜか」を持って、手順は公式ドキュメントを開く
- コンテナと Kubernetes。 段3の話。1台のサーバーが分からないうちに触ると、抽象度が上がりすぎて何も分からなくなる
- 複数 AZ・冗長化・IaC。 段2の話。1台が立ってから
「やらない」と決めた項目は、消えるのではなく後ろに送られるだけです。このサイトの全体地図に段ごとに置いてあるので、1か月が終わったら次の段の START HERE に進みます。
FOUR WEEKS4週で組む
1週間に1つの到達点だけを置く
-
1週目
言葉を自分の言葉で言える
クラウド・IP・ポート・プロトコル。アカウントは作らない
-
2週目
手元で「つながる」を切り分ける
ping・dig・curl -v を打ち、何を確かめているか言える
-
3週目
1台を立てて、止めて、消す
EC2 で nginx を動かし、請求の画面まで見る
-
4週目
壊して直す
わざと壊した状態を、切り分けの順番で直す
1週目: 言葉を自分の言葉で言えるようにする
到達点は、「クラウドとは何か」「IP アドレス・ポート・プロトコルとは何か」を、誰かに口で説明できることです。
| やること | 使う記事 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| クラウドと オンプレミス の違いを「買う・借りる」で説明する | クラウドとは何か | 家族や同僚に1分で話してみる |
| IaaS・PaaS・SaaS を「どこまで借りるか」で並べる | 同上 | 3つを表に書く |
| IP アドレス・ポート・プロトコルを比喩で説明する | ネットワークとは何か | 「住所・窓口・約束事」を自分の例で言い換える |
| TCP と UDP の違いを1行で言う | 同上 | 「Web は TCP、DNS は UDP」まで |
| 分からない語は用語集で引く | 用語集 | 引いた語をメモに残す |
この週は AWS のアカウントを作りません。作ると触りたくなり、言葉が曖昧なまま設定を始めてしまうからです。1週目の成果物は、自分の言葉で書いた用語のメモです。
CHECK 1ここまでの確認
最初の1か月で「やらないこと」に入っているのはどれ?
答えと解説
答え: 2. Kubernetes を触る
コンテナと Kubernetes は段3の話で、1台のサーバーが分からないうちに触ると抽象度が上がりすぎます。1か月目は言葉・切り分け・1台・壊して直す、に絞ります。
2週目: 手元で「つながる」を切り分ける
到達点は、ping・dig・curl -v を自分の端末で打ち、それぞれが何を確かめているかを言えることです。
- 端末のターミナルを開く(macOS はターミナル、Windows は WSL か PowerShell)。
pingを身近なサイトに打ち、返事と往復時間を見る。返事が無いサイトも試し、「返事が無い=壊れている、ではない」を体感する。dig example.com(またはnslookup)で、名前が IP アドレスに変わるところを見る。curl -v https://example.com/で、DNS → TCP → TLS → HTTP の順に何が起きているかを追う。- ping と DNS で分かる「つながる」の仕組みの「切り分けの順番」を、手元の道具で1回通す。
余裕があれば、Linux の最低限(ディレクトリの移動、ファイルの表示、sudo、systemctl)を触ります。3週目に EC2 に入ったとき、そこにあるのは普通の Linux だからです。
3週目: AWS のアカウントを作り、1台を立てて、止める
到達点は、EC2 を1台立て、中に入り、Web サーバーを動かしてブラウザから見て、止めて消すところまでです。
- AWS とは何かを読み、リージョン・責任共有モデル・従量課金の3つを押さえてからアカウントを作る。
- 作った当日に、ルートユーザーの MFA と請求アラート(月の上限で通知)を設定する。ここを飛ばさない。
- EC2 とは何かの「決める5つ」を1つずつ確認しながら、東京リージョンに小さいインスタンスを1台立てる。SSH は自分の IP アドレスだけに絞るか、Session Manager で入る。
- 中に入り、nginx(または Apache)を入れて起動し、セキュリティグループで TCP 80 を許可して、ブラウザからパブリック IP で開く。
- 使い終わったら停止し、翌日に終了して、EBS のボリュームとスナップショットが残っていないか、請求の画面で確認する。
5 の「止めて消して請求を見る」までが1セットです。ここまでやると、従量課金が体で分かり、「止め忘れ」の事故が起きにくくなります。
CHECK 2ここまでの確認
1週目に AWS のアカウントを作らないのはなぜ?
答えと解説
答え: 2. 言葉が曖昧なまま設定を始めてしまうから
作ると触りたくなり、言葉が曖昧なまま設定を始めてしまいます。1週目の成果物は、自分の言葉で書いた用語のメモです。
4週目: 壊して直す
到達点は、自分でわざと壊した状態を、切り分けの順番で直せることです。学習の効率が一番上がるのは、動いたときではなく、動かなくなって直したときです。
| わざと壊す | 起きること | 直すときに使う知識 |
|---|---|---|
| セキュリティグループから TCP 80 の許可を消す | ブラウザから見えなくなる。ping は変わらない | 「通過」の段階。門の設定 |
nginx を止める(systemctl stop nginx) |
接続が拒否される。80 番で待ち受けるプロセスが無い | 「窓口」の段階。ss -tlnp で確認 |
| インスタンスを停止して再開する | パブリック IP が変わり、古い IP では届かない | 「住所」の段階。停止・再開の性質 |
| 秘密鍵を別の場所に移す | SSH で入れなくなる | キーペアの仕組み。Session Manager なら影響しない |
壊すたびに、ping と DNS で分かる「つながる」の仕組みの「名前 → 経路 → 通過 → 窓口」の順で確かめます。どの段階で止まっているかを言えるようになれば、4週目の到達点です。
BREAK AND FIX壊して直す
壊すたびに、どの段階で止まっているかを言う
わざと壊す
直すときに使う知識
わざと壊す: セキュリティグループから TCP 80 を消す
直すときに使う知識: 「通過」の段階。門の設定
わざと壊す: nginx を止める
直すときに使う知識: 「窓口」の段階。ss -tlnp で確認
わざと壊す: インスタンスを停止して再開する
直すときに使う知識: 「住所」の段階。パブリック IP が変わる
わざと壊す: 秘密鍵を別の場所に移す
直すときに使う知識: キーペアの仕組み。Session Manager なら影響しない
1か月が終わったら
ここまでで、段0「土台」と段1「入口」の半分が終わっています。次の1か月は、同じ段1の残り、つまり「誰が何をしてよいか」(IAM とは何か)、「自分専用のネットワーク」(VPC とは何か)、「ファイルの置き場」(S3 とは何か)を、同じ「読む → 立てる → 壊す → 直す」で進めます。
資格をどこに置くかは、Cloud Practitioner の位置づけで扱います。1か月目の内容が身についていれば、試験範囲の「クラウドの概念」と「セキュリティとコンプライアンス」(責任共有モデル)はすでに読める状態です。
詰まった場所は、必ず書き留めてください。「言葉が分からなかった」「切り分けの順番が身についていなかった」「設定の意味が分からなかった」のどれかで、それが次の1か月の計画の材料になります。
CHECK 3ここまでの確認
3週目の「1セット」の最後に含まれるのはどれ?
答えと解説
答え: 2. 止めて、終了して、EBS の残りと請求の画面を確認する
「止めて消して請求を見る」までが1セットです。ここまでやると従量課金が体で分かり、止め忘れの事故が起きにくくなります。
まとめ
最初の1か月は、言葉 → 切り分け → 1台 → 壊して直す、の4週で組みます。やらないこと(資格の詰め込み・全サービスの網羅・手順の暗記・Kubernetes)を先に決め、範囲を閉じます。到達の目安は「EC2 を1台立てて Web サーバーを動かし、止めて消して請求を見る」まで。詰まった場所を書き留めて、次の1か月の START HERE に進みます。
参照ソース
- Amazon EC2 の開始方法(AWS EC2 ユーザーガイド) — 3週目の「1台を立てて、接続し、終了する」手順の一次情報。画面は変わるので、手順はこのページに従う
- AWS Systems Manager Session Manager(AWS Systems Manager ユーザーガイド) — SSH の 22 番を開けずにインスタンスに入る方法の根拠
- AWS Budgets でコストを管理する(AWS Billing ユーザーガイド) — 3週目の「作った当日に請求アラートを設定する」の根拠
- AWS Certified Cloud Practitioner — 2か月目以降に置く資格の試験ガイド(出題範囲)の一次情報


