AWS の説明を読むと、「EC2 に Amazon Linux を入れる」「Ubuntu を選ぶ」「SSH で Linux に入る」と、当たり前のように Linux が出てきます。でも、手元のパソコンは Windows か Mac で、Linux を見たことがない。「Linux は OS の名前」と聞いても、Ubuntu や Amazon Linux との関係が分からない。なぜサーバーだけ Linux なのかも分からない。この記事は、その3つを「通訳」「核と詰め合わせ」「文字で頼む」の3つのたとえで整理します。
この記事の結論
- Linux とは、コンピュータの機械(ハードウェア)とアプリの間に立って通訳をする OS の「核(カーネル)」の名前です。
- Ubuntu や Amazon Linux は、Linux の核に道具を詰め合わせた配布物(ディストリビューション)で、どれも同じ核の上にあります。
- Windows との違いは、画面が無くても動くこと・無料で中身を変えられること・遠くから文字で操作する前提で作られていることの3つです。
- サーバーがほぼ Linux で動いているのは、台数を増やしてもライセンス費がかからず、文字で頼めるので自動化しやすく、クラウドとコンテナの標準になっているからです。
- 未経験の人が最初に触るなら、EC2 に立てた Amazon Linux か、手元の PC に入れる WSL。壊しても困らない場所で触ります。
Linux とは「機械とアプリの通訳」をする OS の核
コンピュータは、CPU・メモリ・ディスクという機械の集まりです。機械は「この番地のメモリを読め」のような細かい命令しか分かりません。一方でアプリは「このファイルを開いて」「この相手に通信して」と、ずっと大まかなことしか言いません。この間に立って通訳をするのが OS(オペレーティングシステム)です。
OS の中で、通訳の中核だけを取り出した部分をカーネルと呼びます。カーネルは、CPU の時間をどのアプリに割り当てるか、メモリのどこを誰に貸すか、ディスクとネットワークをどう読み書きするかを決めます。アプリはカーネルに頼むだけで、機械の細部を知らずに済みます。
Linux とは、このカーネルの名前です。Linux のカーネルはソースコードが公開されていて、誰でも読み、直し、配り直せます。その条件を決めているのが GPL というライセンスで、カーネルの公式ドキュメントに明記されています。「無料で使える」だけでなく「中身を読んで変えてよい」のが、あとで出てくる違いの根っこです。
なぜ「核」だけに名前があるのか。Linux はもともと核だけが作られ、周りの道具は別の人たちが作ったものを組み合わせて使ってきたからです。だから核と道具を分けて考えると、次の「ディストリビューション」の話がすっきりします。
カーネルとディストリビューションはどう違う?
カーネルだけでは、人は操作できません。文字を打ち込む窓口(シェル)、ソフトを入れたり更新したりする道具(パッケージ管理)、Web サーバーやエディタといったアプリが無いと、ただの通訳がいるだけです。
そこで、核と道具を詰め合わせて「これを入れればすぐ使える」形にして配る人たちがいます。この詰め合わせがディストリビューションです。お弁当にたとえると、Linux のカーネルはご飯で、ディストリビューションはおかずを詰めた弁当箱です。弁当箱ごとにおかず(道具の種類・更新の方針・サポート期間)は違いますが、ご飯は同じ Linux です。
| ディストリビューション | 作っている人 | 特徴 | パッケージ管理の命令 |
|---|---|---|---|
| Amazon Linux 2023 | AWS | EC2 で最初に選べる。AWS のツールが最初から入っている | dnf |
| Ubuntu | Canonical | 資料が多く、手元の PC(WSL)でも同じものが使える | apt |
| Red Hat Enterprise Linux | Red Hat | 有料。長い期間の動作保証とサポートを買う | dnf |
| Debian | コミュニティ | Ubuntu のもとになった。安定を重視 | apt |
どれを選んでも、ファイルの扱い・権限・コマンドの大半は同じです。違うのは、主にソフトを入れる命令(dnf か apt か)と、更新の周期です。だから片方で覚えたことは、もう片方でほぼそのまま使えます。
「Linux と Ubuntu は別物ですか」と聞かれたら、こう答えられます。Ubuntu は Linux のカーネルを使ったディストリビューションの1つ。Amazon Linux も同じく1つ。核は共通で、詰め合わせが違う。
CHECK 1ここまでの確認
「Ubuntu」や「Amazon Linux」は、Linux との関係でいうと何?
答えと解説
答え: 2. Linux のカーネルに、シェルやパッケージ管理などの道具を詰め合わせた配布物
Linux は「核(カーネル)」の名前で、それだけでは操作できません。核に道具を詰め合わせて配っているのがディストリビューションです。「カーネルとディストリビューション」の章を読み直してください。
Windows と Linux は何が違うか
「同じ OS なのに何が違うのか」を、未経験の人が困る順に3つに絞ります。
WINDOWS VS LINUX違いは3つ
画面で押す Windows、文字で頼む Linux
Windows
目の前の1台を、画面で操作する前提
- 画面(GUI)で見て押す
- ライセンスを買う。中身は見られない
- 手元の1台を自分で使う
Linux
画面が無くても動く。文字で頼む前提
- ターミナルの文字だけで全部できる
- 無料。中身を読んで変えられる
- 遠くの何台にも同じ指示を送れる
1. 画面が無くても動く
Windows は、画面(GUI)で見て押すことを前提に作られています。Linux は逆で、画面は無くてもよく、文字を打ち込む窓口(ターミナル)だけで全部の操作ができます。サーバーには画面もキーボードもつながっていないのが普通なので、「画面が無くても動く」は飾りではなく必要条件です。
2. 無料で、中身を変えられる
Windows はライセンスを買って使い、中身のソースコードは見られません。Linux はカーネルも道具も公開されていて、無料で使えるうえに、直して配り直すこともできます。クラウド事業者が自分のディストリビューション(Amazon Linux)を作れるのは、この自由があるからです。
3. 遠くから、何台でも操作する前提
Windows は「目の前の1台を自分で使う」ことに向いています。Linux は「遠くにある何十台かに、文字で同じ指示を送る」ことに向いています。文字の指示は、そのまま保存して次も同じことを再現でき、プログラムに書いて自動で実行できます。
| 観点 | Windows | Linux |
|---|---|---|
| 操作の入口 | 画面で見て押す | 文字で頼む(画面は任意) |
| 費用と中身 | ライセンスを買う。中身は見られない | 無料。中身を読んで変えられる |
| 向いている使い方 | 手元の1台を自分で使う | 遠くの何台にも同じ指示を送る |
| 主な居場所 | 手元の PC、社内の業務システム | サーバー、クラウド、スマホ(Android の核も Linux) |
Windows にもサーバー版(Windows Server)があり、EC2 でも選べます。社内の既存の資産が Windows 前提なら選ぶ理由になります。ただ、クラウドで新しく何かを作るときの標準は Linux です。その理由が次の章です。
CHECK 2ここまでの確認
Windows と Linux の違いとして、この記事が挙げていないものはどれ?
答えと解説
答え: 3. 計算の速さが根本的に違う
違いは「画面が無くても動く」「無料で改変できる」「遠隔で操作する前提」の3つで、計算の速さの差は挙げていません。「Windows と Linux は何が違うか」の章を読み直してください。
なぜサーバーはほぼ Linux で動いているのか
理由は3つで、どれも前の章の「違い」から来ています。
無料で、台数を増やしても費用が増えない。 クラウドでは、サーバーを10台にも100台にも増やします。1台ごとにライセンス費がかかると、増やすほど重くなります。Linux はその費用がゼロなので、「必要なときだけ増やして、減らす」というクラウドの使い方と相性がよいのです。
文字で頼めるので、自動化しやすい。 画面で押す操作は、人が1台ずつやるしかありません。文字の指示なら、100台に同じ命令を一度に送れて、書いておけば何度でも同じ結果になります。クラウドの「設定をコードで書く」やり方は、Linux が文字で操作できることの上に成り立っています。
クラウドとコンテナの標準になっている。 AWS は自分で Amazon Linux を作って EC2 に用意しています。アプリを箱に詰めて運ぶ「コンテナ」(Docker など)も、Linux カーネルの仕組みで動きます。周りが Linux 前提で作られているので、Linux を選ぶと道具も資料も揃っている、という循環ができています。
KERNEL AND ABOVEどこまで自分が見るか
クラウドを借りても、カーネルから上は自分の担当
自前のサーバー
- ハードウェア(CPU・メモリ)
- カーネル(Linux の核)
- ツール群(シェル・dnf)
- アプリ(Web サーバー・DB)
EC2
- ハードウェア(CPU・メモリ)
- カーネル(Linux の核)
- ツール群(シェル・dnf)
- アプリ(Web サーバー・DB)
マネージド
- ハードウェア(CPU・メモリ)
- カーネル(Linux の核)
- ツール群(シェル・dnf)
- アプリ(Web サーバー・DB)
自分が面倒を見る事業者が担う
ここで大事なのは、クラウドを使っても、カーネルから上は自分の担当だということです。EC2 は「機械を借りる」サービスなので、その上の Linux の更新・設定・権限は借りた側が面倒を見ます。だから、AWS を学ぶ人が Linux を避けて通れないのです。どこまでが自分の担当かという考え方は、クラウドとは何かで扱った「借りる範囲」の話と同じです。
未経験の人が最初に触るなら
Linux は本を読むより、触ったほうが早く分かります。ただし、壊しても困らない場所で触ることが条件です。候補は2つです。
| 場所 | やること | 向いている人 |
|---|---|---|
| EC2 に立てた Amazon Linux | AWS のアカウントで小さなサーバーを1台立て、SSH で入って触る。終わったら消す | AWS も一緒に覚えたい人。「遠くのサーバーに入る」感覚が最初からつく |
| 手元の PC の WSL | Windows の中に Ubuntu を入れて、ターミナルを開いて触る。Windows は消えない | まず手元で慣れたい人。ネットも AWS の料金も要らない |
EC2 のほうは、立てて・入って・消すまでが1つの練習になります。サーバーの立て方はEC2 とは何かで扱っていて、入る手順は AWS の公式ユーザーガイドに沿えば迷いません。EC2 は消せばやり直せるので、壊すことを恐れなくてよいのが利点です。料金は小さいインスタンスなら無料利用枠の範囲に収まることが多いですが、条件は公式ページで確認してください。
WSL(Windows Subsystem for Linux)は、Windows の中で Linux を動かす Microsoft の仕組みです。Windows を消さずに Ubuntu が入るので、手元で毎日触れます。入れ方は Microsoft の公式ドキュメントに従ってください。
どちらを選んでも、最初にやることは同じです。ターミナルを開いて、いまどこにいるか(pwd)・何があるか(ls)・移動する(cd)の3つを打つ。それが次の記事です。
READ ALSO — 未経験向け・段0 土台
黒い画面の読み方|ターミナルで「いまどこにいて、何ができるか」を知る
FROM CLICK TO COMMAND最初の一歩
画面で押していた操作を、文字で頼むようになる
-
手元の PC
画面を見て押す
-
ターミナル
文字で頼む窓口を開く
-
SSH
遠くのサーバーにつなぐ
-
EC2 の Linux
画面が無くても動く
CHECK 3ここまでの確認
未経験の人が最初に Linux に触る場所として、この記事が勧めているのは?
答えと解説
答え: 2. EC2 に立てた Amazon Linux か、手元の PC の WSL
壊しても困らない場所で触るのが先です。EC2 は消せばやり直せ、WSL は Windows を消さずに Linux を足せます。「最初に触るなら」の章を読み直してください。
まとめ
Linux とは、機械とアプリの間で通訳をする OS の核(カーネル)の名前です。Ubuntu や Amazon Linux は、その核に道具を詰め合わせたディストリビューションで、核は共通です。Windows との違いは、画面が無くても動く・無料で中身を変えられる・遠くから文字で操作する前提、の3つ。サーバーがほぼ Linux なのは、台数を増やしても費用が増えず、文字で頼めるので自動化でき、クラウドとコンテナの標準になっているからです。クラウドを借りてもカーネルから上は自分の担当なので、AWS を学ぶなら Linux は避けて通れません。最初の一歩は、EC2 の Amazon Linux か WSL で、ターミナルを開くことです。
参照ソース
- The Linux Kernel documentation(kernel.org) — Linux がカーネル(OS の中核)であり、CPU・メモリ・デバイスをアプリに割り当てる役割を持つことの根拠。2026年9月時点の記載
- Linux kernel licensing rules(kernel.org) — Linux カーネルが GPL のもとで公開され、誰でも読み・変更し・再配布できることの根拠。2026年9月時点の記載
- What is Amazon Linux 2023?(Amazon Linux 2023 ユーザーガイド) — AWS が自分のディストリビューションを EC2 向けに提供していること、パッケージ管理に dnf を使うことの根拠。2026年9月時点の記載
- Connect to your Linux instance(Amazon EC2 ユーザーガイド) — EC2 の Linux に SSH で接続して操作すること(画面ではなく文字で操作する前提)の根拠。2026年9月時点の記載

